ダズリング・スタイル 輝き続ける女性のためのWEBマガジン
HOME > 連載一覧 > vol.17 本物のチアスピリットが求められるとき
ダズリング・スタイルとは
チアリーディングは、子供から大人までそれぞれの年代で楽しみながらできて、様々な効果が得られるスポーツです。単にダンスを踊るだけではなく、頑張っている選手やチームの応援を通して“一体感や感動を共有する”といったスポーツの新たな楽しみを知ることもできます...
続きを読む...
会津泰成公式ウェブサイト

PEPsチアリーダーズ
連載インタビューvol.17
いまできることREPORT 本物のチアスピリットが求められるとき 中山麻紀子 塩崎佐恵
 
東日本を襲った大震災から、およそ一ヶ月半が過ぎた(5月1日現在)。世の中全体は少し落ち着きを取り戻し、今は様々な形で復興活動が行われるようになってきている。もちろん問題は依然山積みで、東北地方の惨状を知れば知るほど心が痛むのは変わらない。それでも前を向いて進んでいかない限り、未来は見えない。暗い顔になりがちな心を奮い立たせ、せめて表情だけでも笑顔でいたいとみなが祈っている。

チア界でも、笑顔を作って一歩前に進む勇気に貢献するべく全国各地で復興支援活動が展開されている。今回のDazzling Styleは、まだ混乱の続く3月半ば、被災地・仙台に本拠を置くJリーグ「ベガルタ仙台」のチアリーダーチームのチーフディレクターを務める塩崎佐恵と、かつてNFLワシントン・レッドスキンズのチアリーダーとして戦地で慰問活動をした経験を持つ中山麻紀子の二人に、「今チアリーダーとして何ができるか」について話してもらった。
 
塩崎
まだ現状を受け止められていない、というのが正直なところですね。ベガルタチアリーダーズのメンバーにもまだ会えていないですし。電話で話せたのも2~3人。ただ、ようやく連絡がついて、「協力できる事があれば何でも言って。必要な物があれば送るから。」と伝えたら、みな「わたしは大丈夫なので、もっと大変な地域にいるメンバーに何かしてあげて下さい」と言うんです。決して“大丈夫”な訳はないのに、当然のように他のメンバーを思いやっている。メンバーたちの大変さを思うと心が塞ぎますが、彼女たちの見せるチアスピリットの確かさをとても嬉しく思いました。でも、そういう彼女たちに、わたしは、具体的には何もしてあげられないでいる。そうした状況をどう受け止めて良いかわからないというか……。
中山
わたしも、現地の様子をまだ伝え聞いているだけなので、どうして良いものか、まだはっきりとはわかりません。ただ、もう起きてしまった事なので、辛くてもどう受け止めて考えていくかが大切になる。被害の少ない、より冷静な気持ちで考えられる立場のわたしたちだからこそできる事もあるはずですから。
塩崎
そうですね。
中山
海外の雑誌で記事を書いているアメリカ人の友人がいるのですが、彼が現地で取材した時、ある男性が「わたしは生き残ってしまった」とコメントしたそうです。「申し訳ない」と。それはいかにも日本人らしい気持ちで、素晴らしい事かもしれない。でも、生き残れた事を「申し訳ない」と思うのか、それとも「生き残れたからこそ、前向きに頑張っていこう」と思うか。受け止め方ひとつで、未来の開け方は大きく変わってしまう。被災地の方の気持ちを理解することは大切ですが、何もかも「自粛しましょう」という雰囲気になってしまっては日本の経済がまわらなくなる。みなそれぞれ役割があると思います。
悲しいからこそ明るく、前向きである事の大切さを伝えたい
 
塩崎
今元気な人たちは、今そうでない人たちのためにお手伝いをする。それに集中する事が大切ですよね。
中山
実際、被災地でなくても活動を休止しているチアチームは多い。でも、安全が確保されているならば、あまり長く休止はせず再開したほうが、プラス面は多いのではないでしょうか。
塩崎
ベガルタチアのジュニアユースに所属するあるメンバーの保護者から、震災の日から少しして、メールが届きました。本来、保護者から指導者であるわたしにメールを送るのはNGなのですが、「こういう時だからこそ、どうしても伝えたい」と。
メールには、「子供たちの心には、今までのチア活動で育まれた、『勇気や元気を誰かに伝える』というスピリットがある。それはきっと、被災地で傷ついている人たちの心にもプラスになるはずだし、子供たち自身にもプラスになる。だから、今すぐには無理かもしれないけれど、必ず、チア活動を再開させて下さい」ということが書かれていました。「すべての保護者が同じ考えではないかもしれないけれど、どうしても自分の考えを伝えたくて、メールをしました」と……。
中山
その保護者の方には、チアスピリットとは何かが伝わっているのでしょうね。悲しみが消える事はないかもしれない。でもだから余計に、前向きな気持ちで立ち上がらないと!これから先、チアの良さを最大限生かして、それぞれの状況に即した形で、世の中を少しでも明るくする事に貢献できたら嬉しいですね。
励ますつもりが、逆に元気や勇気をもらえた慰問活動での体験。
 
中山
NFLチア時代、慰問活動としてイラクの戦地から戻ってきた兵士3000人に会った事がありました。みな、仲間を亡くしたり、自分自身も大きな怪我をしていたりして、本当はとても落ち込んでいるはずなのに、慰問に訪れたわたしたちを大歓迎してくれたんです。その姿に、励ましに行ったはずが、逆に勇気を貰いました。そして、わたしたちチアも、絶対に涙を見せないようにして、今この瞬間だけでも心の底から楽しんでもらえるよう、全力でパフォーマンスする事に集中しました。
塩崎
わたしも同じような体験があります。アメリカで暮らしていた頃、中学の社会科の先生がベトナム帰還兵で、心に負った深い傷のせいで、ずっとベトナムでの体験を話せないままでいた。でもある日、覚悟を決めて自分の体験を語ってくれたのです。とても辛い内容でしたが、わたしたち生徒は涙を流して落ち込むというより、むしろ先生の姿に強い勇気を感じ、元気を貰いました。
中山
被災地で、物資の支援だけでなく、心を受け止めることで癒したり、元気を出して貰うといった活動もできるのではないでしょうか。
塩崎
自身も被災者であるチアリーダーが笑顔でパフォーマンスをする姿をお見せしたり、一緒にお話したりすることを通して「お互いに元気を与え・与えられる」という事はできるはずだと、わたしも思います。
中山
チアリーダーなら、誰もが励ましたり、勇気づけたりするための活動を考えるでしょう。でも、ただ華やかな衣装を着て踊ってるだけの“応援”は、時としてわずらわしく思われてしまう場合もありますよね。単なる元気の押し付けにならないために本物のチアスピリットをもつことが大切だと思います。
塩崎
逆に、スピリットがしっかりあれば、衣装を着ていなくても“チアリーダー”であることが伝わりますしね。見かけや上辺だけでなく、「チアは踊るだけではない」というスピリットの部分が多くの人に感じていただける活動にしなくてはいけない。繰り返しになりますが、今は本当に、チアの真価が問われている気がします。
そして、本当のチアリーダーたちで、辛い状況の中でも前向きな一歩を踏み出すお手伝いができたら・・・・・。そのためにも、今、元気なわたしたちがしっかり考えて、アクションを起こしていきましょう!

(取材・文/会津泰成)

   
   
   
中山 麻紀子(なかやま まきこ)
11月20日生。千葉県出身。専修大学BLASTS在籍中、留学先のオレゴン大学チアリーディングチームでアシスタントを務め、チアを学ぶ。Xリーグオンワードオークス、スカイライナーズで活躍。XリーグオールスターチアリーダーVENUS、USAオールスターズチアリーダー選抜。2002~4年NFLワシントンレッドスキンズチアリーダーズメンバーとして3年連続活動。 2005年プロ野球千葉ロッテマリーンズチアパフォーマー「M☆Splash!!」ディレクター、2007年JBL「レラカムイ北海道 チア&ドリルチーム ファンタマジック」ディレクター。 現在、柏市町おこしチアリーダーチーム「柏Leaps」エグゼクティブプロデューサー。 (株)チアリングインターナショナル代表。 http://www.cheering.jp/
2008,2009年日米リーダーシッププログラム代表者。
塩崎 佐恵(しおざき さえ)
12月27日生。京都府出身。高校まで米国在住。帰国後。国際基督教大学チアリーディング部キャプテンを務める。1992年チアリーディング指導者資格取得。 卒業後、Xリーグ東京海上ドルフィンズ(現オール三菱ライオンズ)に所属。『Cheerleader of the Year賞』他を連続受賞。 2002年 指導者に転身し、同年Xリーグ・オールスター「VENUS」、2003年ベガルタ仙台チアリーダーズ、2005年東北楽天ゴールデンイーグルス公式チアリーダーズ「東北ゴールデンエンジェルス」など多くのチームを発足、指導。 現在、PEPsチアリーダーズプロデューサー、ベガルタ仙台チアリーダーズ・チーフディレクター、ジュビロ磐田公式ジュニアチアリーダーズ・プロデューサー、東京ヤクルトスワローズ公式ジュニアチアリーダーズ・プロデューサー、(株)PEPs取締役Chairman。
(株)PEPs  http://www.peps-cheer.com/
連載 Interview 一覧
▲このページの先頭へ戻る
一覧はこちら