ダズリング・スタイル 輝き続ける女性のためのWEBマガジン
ダズリング・スタイルとは
チアリーディングは、子供から大人までそれぞれの年代で楽しみながらできて、様々な効果が得られるスポーツです。単にダンスを踊るだけではなく、頑張っている選手やチームの応援を通して“一体感や感動を共有する”といったスポーツの新たな楽しみを知ることもできます...
続きを読む...
会津泰成公式ウェブサイト

PEPsチアリーダーズ
連載インタビューvol.10
前篇 後篇
 
無駄な経験はない
 
Q.長年、活動を続けて来られた間に、挫折をしたり、どうしようもなくなってしまったことはありましたか?

A.そうですね・・・。チア業界というのは女性ばかりの世界ですから、女性特有の人間関係や考え方があったりします。基本は前向きな人たちが多いので、きちんと話せば理解し合えるのですが、話の方向が歪みだすと、難しい方向に行ってしまう事もあって・・・。ただ、そこを修正して方向性を示していく事もわたしの役割ですので、正直、難しいと感じることはありますが、これからも向き合っていかなければいけないと考えています。

Q.ご自身、チア業界全体の調整役というか、まとめる方向に意識を持っていけるのは、どうしてだと思いますか?

A.いままでの経験のすべてが、自分の引き出しになっているからでしょうね。中学時代にやっていた吹奏楽も含めて、何かを達成したことはもちろん、失敗したことも、人生において無駄な経験というのはひとつもなかったと思っています。それで得た引き出しから、経験という道具を取り出すことが出来るからこそ、相手の話しもしっかり聞けるし、吸収して返していくことが出来るのだと思います。

Q.そうした経験は、人間関係だけでなく、チア自体との向き合い方でも役に立っていますか?

A.もちろんです。たとえば、もし私が競技チアの指導者としての経験しかなければ、応援して下さる人たちの気持ちも全然わからず、単なる押し付けの応援になってしまっていたかもしれません。ダンスに使う音楽にしても、競技チアを中心に指導していた頃は、日本語の曲は一切聴きませんでしたし、取り入れようともしませんでした。でも、いまはスタジアムで、2万人の観客と一緒に応援をしています。「そこでは何が受け入れられ、どうすればメッセージを伝えられるのか?」を考えた時、選択するのが日本語の曲だったりするんです。なので、いまではEXILEの曲でも踊るし、チーム状況に応じて『スポーツ、頑張ろうよ!』みたいな元気ソングも取り入れたりもしています。嵐の曲とかで普通に踊ったりもしていますよ(笑)。でも、それがお客さんに喜んでもらえることであるならば、「これこそ本場のチア!」みたいな曲でなくても、私は良いと思っています。ただ、そこを認められるようになるまでには、私自身、ずいぶんと長い時間がかかりましたね。
 
地道な活動の大切さ
 
Q.スポーツエンターテイメントにおける、チアディレクターの仕事については、どのようにお考えですか?

A.チアリーダーの役目は、スタジアムでの活動にしても、オープニングとハーフタイム、ラストで踊る事だけではなく、他にもたくさんあるんです。もっと言えば、試合当日よりもイベントでの貢献度のほうが高かったりもする。
たとえば、地域のお祭りで、田んぼのあぜ道をお神輿と一緒に歩いたり・・・ということがとても大事だったりするんです。そういった地域の方々との触れ合いを通して、チームを愛してもらい、試合を観に来ていただけるようにならなければ、地域スポーツは成り立たないですから。スタジアムでの華やかな活動よりも、実はそうした、選手の代わりに参加している身近で地道な活動のほうが重要だったりするんですね。
そこでファンを作り、「スタジアムに来て下さいね」と笑顔で伝え、スタジアムで会えたら「この間、お祭りに来てくださった方ですよね」と声を掛けてみる。そうすれば、その方は絶対にリピーターになってくださいます。
チアリーダーの役割は、踊ることだけではない。「自分たちには何が求められているか」を常に考え、意識し、笑顔のおもてなしを通して「スタジアムに足を運んでいただいてありがとうございます」という気持ちを選手の代わり伝える。そういうことまでしっかり理解し、そしてメンバーにも理解させて行動させるのが、スポーツエンターテイメントのチアディレクターの仕事だと思います。


Q.今後の目標について伺わせてください。

A.とにかく、私はチアに関わる子供たち皆が笑顔で活動できることが一番嬉しいんです。でも、いまはまだ、全国的に見たら自分の暮らす地域にスタジオさえ見つけられない子供たちもいます。なので、まずは仲間を見つけられる場所をもっとたくさん提供出来たらと思っています。
そして、「アスリートとしてどこまで到達したか」という充実感だけを求めるのではなく、そこに向かう努力の過程の中でたくさんの事を学んで欲しい。そうした充実感まで含めて伝えていけるような指導者を育てていけたらと思いますし、私自身も、そうでありたいと思っています。
 
(取材・文/会津泰成)
 
【 取材後記 】
インタビューの最後に、あらためて、「自分にとってチアとは?」と尋ねてみた。
「追いかけても追いかけても届かない、人生の目標でしょうか。何かひとつ達成しても、すぐにまた新しい目標が出てくる。でも、だからこそ未だに、追いかけ続けているのかもしれませんね」
柔和な表情からは強い意思と覚悟も伝わる。業界のパイオニア的な存在でありながら、彼女はいまなお、チアと初めて出会った頃の感動や新鮮さを忘れてはいない。チアについて語る時、目をキラキラと輝かせる日々はまだまだ、いや、一生続いていくに違いない。チアを通して新たな発見、出会いそして感動を求めて。
 

 

羽柴 多賀子(はしば たかこ)
11月17日生。東京都出身。高校時代はバトン部で活躍。卒業後チアリーディングと出会い、本場米国で学ぶ。帰国後、高校や企業チーム等を指導しつつ、米国カリフォルニア州に本部を置くUSA(United Spirit Association)の日本支部のディレクターに就任、現在代表としてチア普及に尽力。1990年に自身で創設したソングリーディング&ダンスチーム「SILVER WINGS」ほか数々のトップレベルチームを指導。プレーヤーはもちろん、優秀な指導者も多数輩出している。
USA-Japan President 
http://www.usa-j.jp/jp/top.html
Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』Director
http://www.s-pulse.co.jp/fan/orange_wave/
 
連載 Interview 一覧
▲このページの先頭へ戻る
一覧はこちら